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『インフレを2年で実現する元首相の肝いり』

2015年12月31日「木曜日」更新の日記

2015-12-31の日記のIMAGE
年2%のインフレを2年間で実現する現首相の肝いりで就任した黒○総裁の下、日銀が「異次元」の金融緩和に踏み切って、丸1年の折り返し点を過ぎた。○○銀行が常識破りの勢いで国債を買って市場にお金を流せば、国民の間に「インフレになる」という見方が広がり、おのずと株価の上昇や消費・投資の拡大につながり、自己実現的にデフレから脱却する、という触れ込みの金融政策だ。確かに、インフレ率は当初のマイナスから足元ではプラス1・3%に転じた。だが、これは円安による輸入品値上がりの影響が大きく、賃金上昇などを伴う「よいインフレ」には至っていない。さらに消費増税も加わり、国民は生活を圧迫する「物価高」を強く意識するようになってきた。日銀が目指すのは、消費増税分を除くインフレ率を2%にすることだ。日銀短観で、企業が1年後にこの数字がどの程度になると期待しているか調べたところ、平均1・5%と目標に届かなかった。アベノミクス相場の停滞にじれる金融証券市場では、世のインフレ期待に活を入れるために1年前のようなサプライズ効果がある大胆な追加緩和を求める声がかまびすしい。しかし、日銀はそんな市場の催促に迎合すべきではない。追加緩和の効果は限定的で、先々のリスクを膨らませる弊害の方が大きいと考えるからだ。追加緩和で仮に円安が進んでも、輸出が思うように増えない現状を考えると、一層の輸入インフレや経常赤字に伴うマイナス面を無視できなくなろう。(中略)将来、金融政策を正常化する局面になっても、国債暴落が財政や金融機関の経営に与える影響を恐れ、緩和の縮小(出口)に踏み出せなくなる。「期待を高めればインフレになる」とは黒○日銀が自ら言い出した理屈だ。しかし、それに自縄自縛となり、サプライズの再現にこだわれば、金融政策への信認そのものが損なわれる。今後、現総理の政権が消費税率の10%への引き上げを検討する過程でも、財政拡大と追加緩和の「再演」圧力が強まるだろう。経済政策の規律が崩壊するのを避けるためにも、日銀は異次元緩和の現実的な出口に向けた地ならしを進めるべきだ。「○○新聞」と「○○新聞」の社説はともに、リフレ政策の限界を説く、おおむね正しい日銀批判を展開していると評価できる。現下、最大の経済政策問題は、金融政策だけに頼るリフレ政策の限界にあることは疑いない。だが、それに加えて、金融政策がゼロ金利でも経済効果が表れないという典型的な「流動性の罠」に陥っているなかで、厳しい緊縮財政政策を併用することには問題があり、さらには、(財政と金融政策の両輪を駆使した)名目GDP目標政策ではなく、(金融政策だけに頼る)インフレ目標政策だけに専心しようとする限界、そして危険性が存在するといえる。ただし遺憾ながら、両新聞はこれまでも、緊縮財政政策の問題とインフレ目標政策の限界などの課題を認識してこなかった。わが国のほとんどのメディアが、バランスのとれた財政と金融政策を中心とする総需要刺激政策よりも、むしろ、サプライサイド強化という時間のかかる、そしてデフレを助長しかねない「成長戦略」の重要性ばかりを、いたずらに強調している点は残念だ。

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