所有することに無理をしない生活
2017年2月17日「金曜日」更新の日記
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- 今までの価値観が変わる時代に、今までと同じ思考回路で物事を考えてもうまくいきません。一番簡単なパラダイムシフトの方法は、今までの価値観とさかさまなことを考えることです。 つまり、今までの成長期の方程式はもはや通用しないと考えることです。成長期には、とにかく、多少の無理をしても所有した者が勝つ時代でした。企業で言えば、とにかく大量生産して売上を増やすことが、成功へのカギでした。需要が勝手に膨らんでいく、そのマーケットに対してひたすら製品を供給していくことが、企業に大きな利潤をもたらしたからです。 いわば、需要という、膨らんでいく大きな獲物を一本の槍を太く、長くしてとらまえていく。小さな差別化など考えずにひたすら大きくなる獲物を求めて、槍を突き出していく戦略が求められたのです。 ところが、現代の日本では、所有することが大きなコスト負担になってきています。資 産価値が下落し続けているからです。所有することにあまり大きなお金を投資してしまうと、その投資金額は債務として後々まで自分を苦しめることになる。無理して所有する者が敗北する時代に変わったのです。 企業で言えば、マーケットがどんどん細分化して、それぞれの需要はあまり大きくならない。したがって、いろいろな需要という獲物を、様々な太さや長さ、形状の槍でとらまえていかなければならない複雑な戦略が要求される時代になっています。 これからの日本人はこの「所有コスト」への感度を磨かなければならない時代になったとも言えます。今まで「無理をして」生産を増やす、あるいは物を所有する、それが成功への近道として習ったことを一度否定してみましょう。 よい家を買うこと、よい車に乗ることがステータスだった時代は実は、とうの昔に過ぎ去っています。家や車に一所懸命働いて稼いだお金の多くをつぎ込むことが、多くの人にとって、あまり意味がなくなっていることにそろそろ気がつくべきです。 今でも、住宅購入について「年収の５倍以内」とか、住宅ローンの年問返済額は「年収の35％以内」などというアドバイスが、メディアや実際の販売現場でよく行われていますが本当でしょうか。 これらの指標は、どうも経済が右肩上がりで成長をしていった時代のステレオタイプな アドバイスにすぎないと思われます。今の時代、来年の年収ならまだしも５年後、一…－年後の年収がほぽ確定している人など、ほんの少数にすぎません。 それなのに、多くの方が現在暮らしている賃貸アパートやマンションの家賃と比較するだけで、自分の人生を売り渡しているとしか思えないような多額のローンを、しかも定年後まで続くような35年ローンを平気で組んでしまう。こういった思考回路から早くに脱却すべきです。 お隣の国、韓国などでは住宅ローンの頭金は５割くらい用意するのがあたりまえと言われています。日本の場合はＩ割から２割程度です。フラット35に至っては購入価格の１００％全額を融資します、などという「人生売り渡しローン」を政府自らの音頭取りで実施しているような国です。 このことについて、不動産投資を目的とする、不動産ファンドを例に考えてみましょう。2005年から2008年にかけて、多くの不動産ファンドが都心の不動産を買い漁った結果、都心の不動産価格は久々に高騰。これをメディアは不動産バブル再燃、と囃したてました。ところが、2008年秋に生じたりーマンショツクが引き金になり、やがては不動産ファンドを手がけた多くの会社は倒産の憂き目にあいます。 このときに彼らが不動産をどのようにして買っていたのかと言えば、ノンリコースロー ンという、不動産そのものから計上される賃貸収益を基本的には返済原資とするローンで購入資金を調達していました。その際、購入しようとする不動産の価格の何％まで融資するかという基準をＬＴＶ（ローンートウー・ヴァリュー）と呼びますが、ファンドバプルの最終局面ではこの比率が90％にも及んでいました。 このことを住宅ローンと比較してみてください。頭金10％で住宅を買う行為が、今後の不動産マーケットの動向にいかに脆弱なものであるかがわかるはずです。金融機関からみれば、貸したローンの返済原資は、あなたが働いて得る給料です。あなたが返済しきれなくなれば、土地建物を担保に取っているので、これを差し押さえて処分するのです。 ＬＴＶ９０％の危険なローンを組んだうえに、返済原資であるあなたの給料は、昔と違って変動相場制です。私から見れば、借りる側も貸す側もずいぷんとあやうい橋を渡っているように思えてなりません。 住宅の所有コストをなるべく軽減させるには、効用価値としてマーケットに出されている中古マンションを購入することです。自らの身の丈にあったコスト負担のものを買い、自分流に住まうことが、これからの日本人には求められています。無理して住宅ローンを組んで新築マンションを買ったところで、その後の自分にプラスとなるところは少なく、むしろ絶望的に長く続くローン地獄に人生を縛られることになることを今一度認識するこ とです。 こんな時代にあっても、新築マンションを買う人たちは、都心のヴィンテージマンションを「資産」として判断して買い、自らのステータスとして所有する富裕層と、今までどおりの成功の方程式を盲目的に信じて、多額の住宅ローンを組んで買い、人生の大半を価値のなくなっていくマンションにまとわりつく多額の負債に悩まされていく無知な人たちの２種類だけになるかもしれません。 前者の方々の行動は、古今東西の金持ちの行動として全く正しい判断に基づくものですが、後者はどうなのでしょうか。今の日本人はあまりに自虐的ですらあります。下がるとわかっていて新築マンションを買う。新築マンションには多くの問接コストがかかっているのに、それを喜んで受け入れて買う。意識を変えていくときです。
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