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子育て世代の住まいプラン

2018年1月2日「火曜日」更新の日記

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 父親である家長を中心として大家族主義が当たり前だった日本社会は、戦後急速に欧米化してきました。その結果、住宅づくりでも家族一人ひとりのプライベートが重視され、子ども部屋を設けることが普通になっています。  当社の「家づくり体験アンケート」でも、子ども部屋をつくらなかったユーザーはごく少数で、大多数が子ども部屋をつくったと回答しています。  しかし、最近になって新聞やテレビなどのメディアでは「ひきこもりや不登校、そして少年犯罪の増加は子ども部屋の密室化など住宅の間取りに関連がある」とのショッキングなニュースが流れました。子どものためを思ってつくった子ども部屋が、かえって子どもの心を蝕んでいるというのです。  例えば、心理的な側面から間取りの研究を進めているある建築家は、殺人などの重大な少年犯罪を犯した少年の家の間取りを分析、共通項として「家庭内のコミュニケーションを断ち切ってしまう間取りになっている」と指摘しています。  実際にそうした少年の間取りを見てみると、玄関ホールに階段があり家族と顏を合わせることなく自分の部屋に直行できる。また風呂や洗面、トイレといった生活空問も、誰とも顔を合わせることなく使用できるようになっていました。これでは、家族とのコミュニケーションが不足するのも無理はありません。  欧米でも、早くから子どもに自室を与えて自立心を養おうとしていますが、一方で小さい間はドアを開けておくようしつけたり、勉強机をリビングに置くなど常にコミュニケーションができる環境づくりに配慮していると言います。  ところが、戦前まで大家族主義だった日本の家庭には、悲しいかな個室文化におけるノウハウが育っていません。にもかかわらず、欧米の外見だけを見て個室を与えることが親の役割と考え、子どもに部屋を与えてしまう。この誤った子ども中心の家づくりが、ひきこもりや不登校、少年犯罪の増加といった事態を招いている面も否定できないのです。  最近では、こうした家づくりに対する反省から、リビングに階段を設ける間取りプランを提案する住宅メーカーが増えています。家族の集まるリビングを通らなければ自分の部屋に行かれない問取りにすることで、自然にコミュニケーションがとれるようにしようというわけです。  さらに一歩進めて、廊下と小間割りの部屋づくりをやめて家族が集う広い空間を設ける「広がり空間」の間取りもおすすめです。これまでの、玄関を入ると吹抜けの玄関ホールと階段、そして中廊下で左右に分断された部屋といった間取りでなく、玄関を入るとすぐリビングなど家族共用の空間が広がり、そこに2階への階段も設ける。こうすることで、子どもと親が常にお互いの気配を感じながら生活できるようになります。  ただし、こうしたオープンな間取りは冷暖房効率が悪くなるので、省エネを考えると高断熱・高気密仕様にするなどの対策をとることも必要です。  問取り以外でも、親子の交流を図る工夫をしている実例もあります。親子共通の趣味がパソコンであることから、夫婦の寝室と子ども部屋の中間の共用スペースにパソコンコーナーを設置、そこで仲良くインターネットを楽しむことで、家族のコミュニケーションを図っています。  女性の社会進出に伴って、最近は共働きの世帯が増えていることから、こうして家族共通の趣味を活かして家族が触れ合う場所と時間をつくることは、極めて有効な手段と言えます。  また、子ども部屋をつくるときに考えておきたいのは、成長に応じて必要となる部屋のスタイルが変わってくるということです。  乳幼児のころは、寝るのも遊ぶのも親と一緒です。子ども専用の部屋があっても使わないことが多いので、広場的なプレイルームにするのはどうでしょうか。  子どもが成長して小学校へ入学するようになったら、プレイルームを改装して「寝室」としての子ども部屋を与えます。小学校低学年の段階では、勉強や遊びは親のいるリビングでしたがるでしょうから、無理に子ども部屋に追いやることはありません。  子ども部屋で学習させるのは、小学校高学年から中学生になって本格的に勉強が必要になってからでも遅くはないのです。  このように、子どもの成長に合わせて子ども部屋を変えていくには、最初は大きな空間を確保しておき、成長に応じて問仕切りを設けるなど可変型の部屋づくりを考えることがポイントです。また、構造的には子ども部屋の間仕切りは仮設的なものと考え、建物を支える柱などはそこに持ってこないようにすることも大切です。  当社がいち早く開発した子育て・共働き時代の新世代住宅「カトラン ジェニー」は、そうした家族のコミュニケーションに配慮した住まいです。  1階の間取りをオープンスペースとし、2階への階段をリビングに設置して子育て時代の家族のコミュニケーションを重視。さらに、子ども部屋の間仕切りに可助式壁パネルシステム「スーパーパネル」を採用して、子どもの成長に合わせて部屋が自由に変えられる構造になっています。  戦後、経済的にも文化的にも欧米のキャッチアップを進めてきた日本では、いつの問にか自立心や個性を育てるという名目のもとに、子ども中心の家づくりが幅を利かせるようになりました。しかし、そうした家づくりの先に待っていたのは、コミュニケーションの断絶による心の荒廃です。  子ども部屋は勉強して寝るところと位置づければ、ベッドと机を置く3畳分のスペースがあれば十分です。そろそろ子ども中心の家づくりから脱却し、余ったスペースで主寝室にサニタリーを設けたり、共用コーナーを設けたりといった夫婦中心の家づくりを考えたらどうでしょうか。

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