へやみけ

トップ > 平成30年1月> 22日

欠陥住宅の防止と対応

2018年1月22日「月曜日」更新の日記

2018-01-22の日記のIMAGE
 最近、シックハウス症候群や欠陥住宅など住まいに関するトラブルが大きな社会問題になっています。楽しい生活を送るために建てたはずの住宅が、安全で快適に住むことができないことになったらこんなに悲しいことはないでしょう。ところが、従来この問題に関する法律は民法上に規定があるだけで、十分なものとは言えませんでした。  そこで登場したのが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(通称・品確法)です。この法律は、「住宅性能表示制度の創設」「瑕疵担保期間の十年義務化=住宅に係わる紛争処理体制の整備」の3つの柱から成り立っています。このうち、欠陥住宅の問題に深く係わってくるのが「瑕疵担保期間の十年義務化」と「住宅に係わる紛争処理体制の整備」の2つです。  「瑕疵担保期間の十年義務化」は、品確法で次のように定められています。  【第87条】「住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵について、民法に規定する担保の責任を負う」 【第88条】「新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等に隠れた瑕疵について、民法に規定する担保責任を負う」  つまり新築住宅の請負(家を新築する場合)や売買(新築された建売り住宅を購入する場合)の契約において、基本構造部分の欠陥に関しては最低10年、建てた側や販売した側に欠陥を修補または賠償する責任があることになったわけです。  ここで、ユーザーが注意したいのが担保責任の対象となる箇所が構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に限られている点です。  「構造耐力上主要な部分」とは、住宅の基礎や基礎杭、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材などで、その建物の自重や積載荷重、積雪、風圧、土圧もしくは水圧、地震等の衝撃を支える部分を言います。  ただし、対象に含まれない地盤に関しては、事前の地盤調査を踏まえた基礎の設計・施工を行う義務があるため、軟弱地盤に配慮しないで不同沈下が起こったような場合は、基礎の瑕疵として対象になります。  「雨水の浸入を防止する部分」には、住宅の屋根や外壁、住宅の屋根や外壁の開口部に設ける戸やその他の建具、雨水を排除するために設ける排水管のうち、屋根または外壁の内部にある部分が挙げられます。  これ以外の箇所で瑕疵を主張しても、それは品確法の対象とはなりません。例えば、ドアが動きにくくなったとします。これが基礎や柱など主要な構造上の欠陥が原因になっている場合は品確法による瑕疵担保の対象ですが、ドア自体の反りによるものであれば補修や賠償の対象にはならないということです。  この場合の保証がどうなっているかも、契約書でチェックしておく必要があります。当社では、構造上の欠陥に起因しない材料の性質による不具合や仕上材のキズなどは「(財)住宅保証機構」の基準に基づいて保証しています。  これは、品確法の瑕疵担保責任に対応しているほか、1、2年の短期保証の対象として品確法では対象外となる仕上げの剥離や建具の変形、浴室の水漏れ、設備の不良等でも無料で補修するものです。  また、この保証は業者が倒産してしまった場合にも有効です。品確法では、たとえ瑕疵があっても業者が倒産した場合は、その責任が追及できなくなってしまいます。でも、この住宅保証機構に登録している業者では、代わって住宅保証機構が保険で対応してくれることになります。  そうした「瑕疵担保期間の10年義務化」と並んで、住宅をめぐるトラブルの解決に大きな影響を与えるのが「住宅に係わる紛争処理体制の整備」です。これは性能評価を受けた住宅においてトラブルが発生した場合、国土交通大臣指定の「指定住宅紛争処理機関」が紛争のあっせん、調停、仲裁を行ってくれるものです。  そして、この紛争を処理する際に「住宅紛争処理の参考になるべき技術的基準」も設けられました。それが「不具合事象の発生と構造上主要な部分に瑕疵が存する可能性との相関関係」の基準です。  具体的な不具合事象としては、壁や柱、床の「傾斜」、壁や柱、床、天井、梁、屋根、そして基礎の「ひび割れ」や「欠損」、「破断または変形」の4」つが定められ、それぞれに瑕疵の可能性が高い「レベル3」、一定程度瑕疵の可能性がある「レベル2」、瑕疵の可能性が低い「レベル1」の基準が示されています。  もちろん、この技術的基準だけで瑕疵かどうかを判断できないことは、留意事項として「紛争処理委員は、この基準を参考とする場合であっても、個別住宅における不具合事象の発生状況その他の状況を勘案して、住宅紛争処理を迅速かつ適正に進めること」とされていることから明らかです。しかし、参考とはいえ瑕疵を判断する技術的基準が定められたことはユーザー保護が一歩前進したと言えます。  ただし、指定住宅紛争処理機関が利用できるのは、住宅性能表示制度による評価機関の評価を受けた住宅に限られます。評価を受けるには20~30万円ほどのコストがかかりますが、その評価は1級建築士によって設計段階から施工段階、そして完成段階とそれぞれの段階で設計図どおりの施工が実施されているかどうかを現場で厳しくチェックするもので、けっして高いものではありません。  欠陥住宅に対する保証体制が整備されつつあるのは間違いありませんが、1番いいのは欠陥住宅をつくらないことです。そのためには、性能表示制度の第3者機関による性能評価を積極的に活用すべきでしょう。

このページの先頭へ