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自分の居住地を住みやすくする

2018年3月12日「月曜日」更新の日記

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 生活に根ざした街づくりをするために、住民参加の重要性と必要性が大きな課題となっている。 「住宅管理」の問題を通じて、そのことをながめてみよう。 住宅管理という言葉は、マンションの管理問題などとからんで近年クローズアプされてきた。 そこでいわれている管理とは、建物の維持管理のことが中心だが。 本来の住宅管理とは、住民が自分たちの住んでいる住宅や居住地を住みやすくするためのものである。  イギリスにオクタビア・ヒルという女性がいた。 ナイチングールとともに19世紀の偉大な2人の女性として挙げられている人物である。  オクタビア・ヒルは住宅管理の元祖だといわれる。 この人が出てくるまでは、イギリスでもあまり住宅管理のことが重要に考えられていなかった。  彼女は1838年に生まれ、26歳のときに美術批評家であり社会改良家でもあったジョン・ラスキンに出会う。 ジョン・ラスキンの社会改良思想に共鳴し、住宅改良に取り組むことになる。 住宅を改良しなければ生活はよくならないと考えたのである。  ラスキンは芸術家でもあったけれども、当時のヨーロッパでは、多くの芸術家・建築家は、芸術家・建築家である前に、社会改良家なのだった。 つまり、何のために芸術をつくり建築をつくるのか、それは世の中をよくするためだとする。 だから彼らはそれぞれに社会改良の思想をもった思想家だった。 このあたりが、今日の日本の芸術家・建築家のあり方と違っている点である。  ともあれオクタビア・ヒルは、理想の実践に着手する。 19世紀の中頃といえば、産業革命の最中であり労働者は劣悪な住環境にあった。ヒルは民間の借家を3軒買い取り、借家に入っている人たちを訪問し、自分たちの手でその家を整備し、まわりを清掃して住みよい環境にしてゆくように指導した。 すべてを住んでいる人たちにやらせた。借家であろうと自分が住んでいる所は自分たちでよくしようと教えこんだ。 それは住む者が住宅改善の主体になるという、自主管理意識の誕生であった。  このことによってオクタビア・ヒルは長くその名を後世に残すことになった。また、この住宅自主管理の伝統が、今日のイギリスの住宅政策に根づき、ヨーロッパの国々にも影響を与え続ている。

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