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全館暖房と輻射熱

2018年4月14日「土曜日」更新の日記

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 結露が発生しない家にするためには、家全体を均一な温度にすることが必要だ。そのために「全館暖房」という方法が必要となる。この全館暖房とは文字どおり家の中すべてを暖めるという意味だ。この全館暖房を省エネルギーで実現させるためには、断熱・気密の高さが条件となっていたのだ。  日本では、以前からの習慣で、一部屋ごとの局所暖房がおこなわれてきている。そのためか、人のいない部屋も暖めるのは電気代がかさむという感覚がある。しかし、暖房でエネルギーをたくさん使用するのは、冷えた部屋を急激に暖める場合であって、全館暖房は家全体を均一な温度に保つ方法だから、思うほど消費エネルギーは大きくない。しかも、高レベルの断熱・気密がほどこされた住宅ならば、全館暖房をより省エネルギーで実現できるのだ。  全館暖房を実現するために利用されるのが、集中式暖房といわれるものである。  集中式暖房の場合、住居内で必要とされる熱はすべて集中式の暖房ボイラーによって生産される。燃料はガスや石油などで、設備によっては自動運転も可能だ。この暖房熱は配管やダクトで住居内に分配されるため、暖房するうえでは暖房機の配置は自由となっている。  暖房熱を送るためには熱媒体が必要だが、よく利用される熱媒体は水だ。水は熱をたくさん吸収して運ぶことができる。空気も熱媒体として利用されるが、空気が水より優れている点は、配管システムが気密性に欠けていても、空気なら住宅内に損傷を起こすことはほとんどないことだ。しかし、空気は水よりも比重が軽いため、わずかな熱容量しかない。同じ熱最を伝えるためには、実に容積として水の3000倍以上が必要となる。したがって、一般の住宅の場合には水を熱媒体とするケースが多い。  さて、温水暖房の場合、個々の暖房機器への熱の運搬は2本の導管(給水と排水)によっておこなわれている。たとえ広い範囲に配管する場合でも、温水暖房なら循環ポンプによって分配するため、技術上問題ないとされている。  ところで、暖房器具の大きさだが、これは各住宅の大きさや住まい手の希望、すなわち居室に対する暖房計画によって決定される。設置場所は、窓の下あたりがよい。窓辺の熱損失が一番大きいからそれをおぎなえるし、壁を暖めてその輻射熱によってまた部屋が暖められるからだ。こうした壁や床あるいは天井などの輻射熱を利用した、いわゆる輻射暖房は先人たちの知恵である。  ドイツ、スウェーデンなど住宅先進国では、この全館暖房の考えに基づき、外断熱で高断熱・高気密を実現し、壁、床、天井などによる輻射暖房を利用している。器具については、パネルヒーターが一般的である。このパネルヒーターがよく用いられるのには訳がある。壁面に沿って設置ができるため、わずかなスペースでも大きな熱放出面積が確保でき、室内の空気を効率的に暖めてくれるからだ。  輻射暖房では、暖められた空気は壁面に沿って壁を暖めながら上ってゆき、天井を暖めて、さらに床へ放射熱として伝わる、といった具合になるのだ。  10年ほど前、アメリカからドイツ、スウェーデンに渡った「幅木暖房」といわれる暖房機器は、まさにこの輻射暖房を考慮したものだ。この幅木暖房は7センチほどの幅しかない細長い幅木のような暖房機器である。これは銅管の周囲に装備されたアルミが、銅からできているワイン、もしくは銅でできた金網を熱源とし、壁面に沿って大きな熱を放出する仕組みであり、壁を暖めることによって全館暖房を実現している。  このほか、日本にも多くの暖房器具がある。断熱・気密さえしっかりしていれば、大がかりな暖房装置を設置する必要はない。  業者の宣伝に乗せられて、あまり高額なものを入れるとメンテナンスも大変だろうし、何より故障したときにお金がかかってしまう。

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