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【M不動産のブランド】

2016年9月14日「水曜日」更新の日記

2016-09-14の日記のIMAGE
某マンションこそ起用すべき建築家だと思えてならない。けれども購入した人にとってはおそらく、そんなことはどうでもよかったことだろう。だいたい、その建築家の先生が、建築業界でどのように評価されているかなどマンションの購入を検討する人にとっては、それほど興味がない。大切なのは、よくは知らないけれどもプロフィールから察するに、とにかく偉い先生によってデザインされたという事実であり、〇〇不動産の数多いマンションの中でもその物件はさらに特別なのだ、というイメージだろう。〇〇不動産のマンションの中には、余裕と危機感が同居しているように思える。販売上有効となる切り札探しにかけるエネルギーが伝わってくるほどに、それだけプロジェクトに費やせるカネと時間に、他社と比較して余裕があるからだろうと想像しつつも、マンションという商品の将来性に危機感を感じているからこそ、そこまでエネルギーを発揮できるにちがいないと感心してしまう。抱える危機感の背景には、〇〇不動産が商品企画力においてもプライスにおいても、業界のリーダーであるという自負心があるようだ。自分たちが他の不動産会社のように、相場から読み取れる手堅い値付け、つまりこれならほぼまちがいなく売れるだろうというような値付けに終始してしまっては、業界全体の将来の可能性を狭めるだけだ。近隣の相場が坪単価200万円だとすれば、競合物件と比較して坪210円くらい、多少背伸びして坪220万円で売ることはできないものか企画を練るのがごく一般の不動産会社の思考である。だが、M不動産は、他とはまったく競合しないだけのマンションを作り上げることで、坪250万円の値付けはできないものか、と模索しているように思える。20坪の住戸であれば総額で1000万円近い差になるわけだから、その差を埋めるのはいかにM不動産のブランド・イメージが浸透しているからといって、たやすいことではない。そこで必要になるのが、切り札なのである。M不動産のマンションを購入する人にとって大切なのは、まず、相手の切り札が何なのか、よく見きわめることだ。それまで、とにかく盲目的に憧れていた物件について、もう一度引いて眺めてみる姿勢が必要である。もちろんその際に、ブランド名による品質の格差について先入観を持たないことだ。ブランドの差は土地の値段とその土地が持つイメージの差なのだ、品質においてはブランドの序列に逆転現象さえあるのだ、という割切りを持っていた方がよい。切り札についてきちんと認識したら、次は近くで販売している他社の物件との坪単価の比較である。他社物件と価格帯は同程度なのか、それとも坪いくら程度ちがうのか、冷静に把握した上で、もう一度その切り札について検討してみたらよい。M不動産が、さあ魅力的でしょう、と突きつけるその切り札に対して、自分自身にとって割高のコストを負担してまで手に入れる価値があるのか、十分に検討することだ。考えてみれば、M不動産にある種の余裕が見える最大の理由は、それだけ他社のマンションには切り札を持たない、つまり明確な差別化のできていない商品が多いということである。M不助産がプライスリーダーとしての地位を確固たるものにしてしまうことは、他の不動産会社にとっても歓迎はできないはずだろう。であれば、M不動産に余裕を持たせて走らせているのは、自分たちにもその責任の一端があると肝に銘じてほしいものだ。

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