私的整理のメリットとデメリット
2016年12月2日「金曜日」更新の日記
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- ① メリット ガイドラインによって私的盤理を行うことのメリットは次のように整理できる。 第一に，法的手統を開始したことによって生じる企業価値の減少が回避される（企活研[2005] 15頁）。これは，なお実証的に｡分析されるべき余地を残しているとはいえ，経営去・実務家に｡は社会心理的な現実として，手統選択において強く意識されている。のみならず，このことを客観的背景として，法的整理においては制約される「商収引債権」への随時弁済が私的整理においてはさしあたり岡原されることの意味は小さくない。ガイドラインはこの点を明確にしている。また法的整理よりも私的幣理の方が迅速であれば，そのことが企業価値の劣化を回避するllで持つ意味は当然に大きくなる。 第二に，ガイドラインは私的整理において一部に見られた一時停止をめぐる不明朗さを回避する。私的整理においても，個別的回収をさしあたり停止することが最重要の課題となるが，従来この場面で，整理屋等の暗躍が見られた（四宮他［2001] 9頁［四宮章夫発言］）。ガイドラインの定めた二段階のルール（同4(1)～（3）および5(3)③）はこの点を明瞭なものとする。 なお，ガイドラインにおける経営責任・株主責任の要件の不明瞭さ（同7（4）（5））は否めないが，これもまた，たとえば地方の現状などに即した実務の知恵とみることができよう。 ②デメリット これに対して，私的整理の次のようなデメリットはガイドラインによっても払拭されていない。 まず，第一の問題は，対象債権者全員の同意を前提とすることから，一人でも反対債権者がいる場合には，それがどのように不合理なものであっても，再建計画の成立が妨げられるという問題(Hold-up問題）である。これは，私的整理の持つ迅速性という根本的メリットを脅かすのみならず，主要債権者が私的整理を進めるために，債権者平等による配当（プロラタ原則）を大幅に譲歩するという「メイン寄せ」という屈折した形の弊害となって現れている（企活研［2005] 13頁。ガイドライン7(6)参照）。 第二の問題は，私的整理が調整を見ず，またはその実施に失敗して法的手続に移行した場合の，不連続性である。たとえば，私的整理の中で，特定の出資者が当該事業再建のためのスポンサーとして合意されていたとしても，このものが，移行した法的手続の中でスポンサーとしての地位を保障されるとは限らない。また，法的手続開始後に，倒産企業に対して為された融資はDファイナンスとして法的保護を受け，リスクの低いものとなるが，私的整理の段階で倒産企業になされた融資はそのような保護を受けない。
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