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躯体改修—失敗例

2016年12月6日「火曜日」更新の日記

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まず、最近の事例からである。塗替えに際して旧塗膜の上に無機系の下地調整材を塗り、その上を無機系のトップコートで仕上げたところ、完成してほどなく、きれいに仕上げた外壁が白い粉を吹くように汚れてきた。トップコートを通して雨が下地調整材に侵入し、下地調整材のアルカリ分が外壁表面に浮き出てきたものと思われる。無機系の材料は有機系の材料にくらべて汚れ方が自然で、コンクリート躯体にもやさしい。無機系の下地調整材はコンクリートの中性化抑制にも有効である。ただし、使い方や施工手順をまちがうと、この例のような現象が生じることがある。塗料にはシンナーで薄める溶剤型のものと、水で薄める水性型のものがあるが、最近、塗料メーカーは「地球にやさしい」などのキャ。チフレーズのもとに、水性型の製品開発に力を入れている。たしかに、水性型の塗材はにおいが少ないのでマンションの塗替えにもってこいである。アクリル系、ウレタン系、フッ素系、シリコン系などさまざまな製品が開発されており、見本で見るかぎりでは溶剤型の製品と、色・つやともに遜色がない。ただしメーカーによっては、実際に塗ってみると、色調の強い色は褪色が旱かったり、なかにはたいへん汚れの早い製品が混ざっていたりする。丘の上の白いマンションが塗替えてから半年もしないうちに、なんとなくグレーに汚れてきた事例がある。水性型の製品すべてに問題があるわけではないが、十分に実績をもたない新規開発の製品には、メーカーの予測を超えた事態が生じる可能性があるのも事実である。最近は汚れ防止を標榜する卜。プコートも販売されているが、使い方によっては期待どおりの性能を発揮しない製品がある。塗替えには、現在の塗膜の上に新しい塗膜の付着状態をよくするために、シーラーとかフィラーとかいう材料を下塗りする。この下塗り材をまちがえると、新しい仕上げ塗材がはがれてくることもある。あるマンションで、現塗膜への塗替え塗材の食いつきをよくするために、メーカーのすすめでエポキシ系の下塗り材を採用した。ところが、仕上げ塗材に所定の付着強度を確保できなかったことがある。この例では、いったん塗替えた塗材をはがしとり、全面的な塗替えをおこなっている。また、最近では下塗り材が不十分であったために、仕上げ塗材があばた模様にはがれてきた事例が報告されている。そのほか、もうずいぶん前であるが、住戸内への結露防止のために採用した、断熱性能の高い厚づけ塗材が工事途中ではがれ落ち、設計変更を余儀なくされた事例もある。以上のような失敗事例を見ると、塗料メーカーの推薦製品が万能ではないことがわかる。もちろん、メーカーはさまざまな実験のうえで自社の製品を市場に出しているのであるが、建物の環境や、施工時の条件などによって期待どおりの性能を発揮できない。このことから判断すると、塗替えに際してのさまざまな条件を考慮したうえで、十分に施工実績のある材料を選択することが無難といえる。

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