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建替えから修繕・再生へ

2016年12月15日「木曜日」更新の日記

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国立富士見台団地は一九六六年の旧住宅・都市整備公団の分譲で、初年度入居以来、現時点で三五年目にあたる。JR中央線国立駅からバスこそ使うが、学園都市国立にふさわしい緑の落ち着いた環境のなかにある。二九八戸、九棟からなり、共用の階段幅は狭いが、棟どうしの間隔がゆったりしており、初期公団分譲のよさをたっぷりともった団地である。この団地に建替え計画が浮上したのは一九八七年のことで、その後、一九九〇年に建替え推進決議をし、ほぼ建替えが成立するかに見えた。しかし、権利配分をめぐって一部区分所有者の合意がとれず、二年後の総会で建替え問題に二年間の冷却期間をおくことが決定された。このあいだはちょうどバブル経済期への突入と、その終焉に重なっている。この時期にもちあがった建替え計画は、ほとんどが前述した余剰床の分譲によって新しい住戸を無償で入手しようとするもので、高騰した地価に支えられたものである。バブル期の終焉とともに建替え計画の修正をせまられたのは、なにも国立富士見台団地にかぎらない。経過のなかで、管理組合がもっとも苦悩したのは、建替え議論の凍結を決議した前後であろう。入居二三年目に建替え問題が浮上してからは、二度目の外壁修繕や設備の更新工事の必要にせまられながら、修繕らしい修繕はほとんど実施されなかった。修繕したくても、「修繕をすると建替えが遠のく」とする根強い反対が修繕をはばんだのである。このあいだに疲弊したのは、建物だけではなく、住民自身でもあり、多くの役員経験者が団地を去っていった。そんななかで、再生へのきっかけになったのが、首都圏の居住者組織が実施した建物診断である。その報告書では、「適切な修繕をほどこせば、今後も建物に構造上の問題は何らない」「適切な修繕をほどこしたうえで、健全な再開発が計画される必要がある」という二点が指摘された。管理組合はこれを受けて、一九九四年度中に建替え再計画を射程に入れた将来一〇年間の長期修繕計画を策定し、遅ればせながら一九九五年度に外壁を中心とする大規模修繕工事を実施した。入居三〇年目のことである。管理組合が保全管理するのは共用部分に限定するのが一般である。ただし、建物が築三〇年に近づくと、共用部分にだけとどまっていては、真の意味で良好な住条件を満足できないのが現実であろう。そこで専有部分の改善にも管理組合は積極的に踏みこんでいる。たとえば、入居以来三〇年間、外壁に専有者が勝手に穴をあけることを規約で禁じてきたが、エアコンスリーブ用穴二ヵ所、浴室給湯用穴を全住戸に共通してあけることを決定している。エアコンの新設、浴室給湯設備の改善を希望する居住者の要望にこたえたものである。さらには、モデルプランを提示し、専有部分の改善を希望する住戸に便宜をはかった。専有部分の改善を実施した住戸はのベー○○戸、小は網戸の交換から、大は住戸内の全面改装まである。なお、浴室は全戸を対象にして、床防水を共用部分に準じて実施している。そのほか、電気幹線工事の改修を実現したのも画期的なことである。六〇年代後半に分譲されたマンションは、電化製品の普及にともなう電気容量不足が悩みの一つであるが、各戸一〇〇ボルト、二〇〇ボルトの二回線で六〇アンペアまでの使用が可能になった。その後、給水管の改修工事も実施している。これらの工事によって、国立富士見台団地は見違えるように蘇生した。工事実施前にあった一部の声のように「建替えが遠のいた」感がなきにしもあらずである。ただし、おおかたの居住者が工事の完成を喜んだのは確かなことで、団地内に明るさと平静さが帰ってきた。国立富士見台団地の周辺は環境のよさと便利さによって、現在もいくつかの新築マンションが建設中である。ここでは、再開発計画を横目でにらみながら、三〇年団地の課題を最新のところで考えていくことになろう。

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