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大切な住宅のメンテナンス

2018年1月23日「火曜日」更新の日記

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 日本の住宅の建替えサイクルが約26年と欧米各国に比べて非常に短いことです。しかし、その多くの場合、構造がダメになって建替えが必要になっているわけではありません。ライフスタイルの変化や子どもの成長に伴って間取りの変更が必要になったり、建てた後のメンテナンスが悪くて建て替えることになるケースが圧倒的に多いのです。  住まいを長持ちさせるには、リフォームしやすい家づくりを行うことはもちろん、適切な維持管理を行う住宅のメンテナンスも非常に重要になってくるのです。  それは、国の住宅政策にも表れています。経済の高度成長期には、土地の値上がりを背景に住宅の取得が土地を資産として持ち、その活用で買替えや建替えができることを主眼にした「スクラップ&ビルド」の家づくりになっていました。  ところが、このスクラップ&ビルド型の家づくりは、今日の経済情勢や環境問題への関心の高まりから限界を迎えています。  1つがデフレの進行です。経済が右肩上がりで成長し、それに伴って所得が増えていくなら、拡大再生産につながるスクラップ&ビルドでもよかったかもしれませんが、現在はむしろ所得が減っていくデフレの時代に突入しています。従来のような住宅建築は、破綻を招くもとと言えます。  もう1つは環境問題です。家を建て替えれば、当然建設廃材が出ます。また新築する場合でも、資材を加工するのにエネルギーが必要になります。これらはいずれも環境に負荷をかける行為であり、環境への影響を少なくするには一つの家をできる限り長く活用することがポイントになってくるのです。  そこで、政府が「第8期住宅建設五箇年計画(平成13年~17年度)」の中で打ち出したのが「良質な住宅ストックの再生と、既存ストックの活用」です。特に、既存ストックの活用という面では中古住宅流通市場の必要性が言われています。  というのも、これまで日本の住宅は、築後に資産価値が急激に減り、築20年もすると価値がほとんどなくなってしまうのが現状でした。これに対して中古住宅市場が整備されているアメリカでは、メンテナンスしだいで資産価値をほとんど減らすことなく売買できる環境があります。それが住宅の耐用年数を長くしているわけです。  日本でも、ようやく中古住宅市場の整備に向けた取組みが始まりました。住宅金融公庫が平成12年10月から中古住宅融資制度を拡充し、すべての基準を満たす中古住宅の購入に対して新築並に優遇する制度をスタートさせています。  また国土交通省も、重点化施策として中古住宅の瑕疵保証制度の創設を打ち出しました。これは、新築時に住宅性能表示制度など公的機関による検査が実施された中古住宅に関しては、保証機関が現場検査を実施。それに合格した中古住宅は、売買後5年以内に欠陥が見つかった場合は売り主に代わって保証機関が補修費用の大部分を負担するものです。  もちろん、築後何年経っても資産価値のある住宅にするには、適切なメンテナンスが必要で、そのためには費用もかかります。マンションであれば管理組合が修繕積立金を徴収してくれますが、一戸建ての場合は自分でメンテナンス費用を捻出しなければなりません。 しかも、思った以上に費用がかかるのがこのメンテナンスなのです。  例えば、外壁。昔多かったモルタルの吹付け仕上げでは、年月が経つとモルタル自体に微細な亀裂が入るようになります。亀裂があればそのつど補修し、7~10年で塗替えが必要でしょう。  サイディングはモルタルのように亀裂の心配はありませんが、塗装品なので色あせします。やはり7~10年で塗直しが必要になりますし、できれば20年くらいで張り替えるとよいでしょう。費用としては200平方メートルの外壁の場合、塗装で約40万円、張替えでは約180万円ほどかかります。  次に屋根。お馴染みの陶器の瓦なら、釉薬をかけて焼いてあるので色落ちもなく塗直しの手間はほとんど必要ありません。5~6年ごとにずれや割れを点検するだけでよいでしょう。  しかし、最近の住宅に多い彩色スレートではそうはいきません。いずれ色があせることから10~15年で塗直しが必要になるほか、20~30年くらいで全面的に葺替えを検討する必要があります。費用も標準の広さの屋根(125平方メートル)で防水塗装が約16万円、張替えでは約75万円になります。  そのほか、内装のクロスは10~15年で張替え(費用は約490平方メートルで約45万円)、畳の張替えは1枚1万2000円くらい、ユニットバスも20~30年くらいで入替えが必要で、配管も含めると約100万円の費用がかかります。  こうした5~10年ごとのこまめなメンテナンスや築後20~30年くらいで必要になる大規模なリフォームを合わせると、その費用は年換算で建築費の1.5~2%にもなります。仮に2000万円の住宅を建てたとすると、その額は30年間で約1000万円になる計算です。  この費用を嫌ってメンテナンスをしないでいると、必ず経年劣化するのが住宅です。不具合が次々出てきて住宅の資産価値が大きく下がるほか、最悪の場合は災害時に危険な住宅になってしまいます。  かといって、これだけの費用をすぐに捻出するのは容易なことではありません。住まいを建てるときの資金計画の中にメンテナンス費用を組み込み、計画的に資金を積み立てておくことが大切です。そして、その積立金でこまめに適切なメンテナンスを行うことが資産価値が持続するストック型の住まいづくりにつながるのです。

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