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せめてこの時期、夢見て欲しい

2018年3月25日「日曜日」更新の日記

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 モデルハウス見学については、「しないほうがよい」「いや、したほうが役に立つ」など、住宅関連の識者間では賛否両論、それぞれにもっともな理由があるようです。「しないほうがよい」と主張する人は、宣伝のためにお金をたっぷりつぎこんだ「見せるため」のぜいたくな建物を見て自分もそんな家が建てられると、その気になってしまうことを懸念しているようです。たしかにモデルハウスは、数あるハウスメーカーが互いに競って自社の商品の特長を強調するために建てたものですから、大きくて広くて立派で、見る人が思わずため息をもらすような素敵な家ばかりです。敷地も予算もたっぷりなら、気に入ったモデルハウスと同じような家が建てられるでしょうが、そんなケースはまれですよね。大半の人は、限られた条件で家づくりをするのですから、贅を尽くしたモデルハウスを見てその気になってしまったら予算オーバーに苦しむか、さもなくばあれもだめこれもだめでみじめな気持ちを味わうことになりかねない。だから、いっそのことそんなものは見ないほうがいい…という論法です。しかし、その気になってしまうという懸念はあるものの、私はやはり、モデルハウス見学は積極的にしたほうがいいと思います。というより、見なければ損。なぜなら、メーカーに依頼して家を建てようとしている人にとっては、モデルハウスは貴重な情報基地であり勉強の場ともなり得るからで、見学の仕方によっては実に多くのメリットを得ることができるからです。具体的にどんなふうに利用したらいいのか、以下の項で詳しく述べますが、まず最初に言いたいのは「大いに夢を見て楽しんでください」ということです。おおかたの建築家や住宅評論家は、「住宅展示場で見てはならないもの、それは夢である」と言います。もちろん、坪36万円からという謳い文句をそのまま信じて、美しく趣味のよいインテリア、大きな1枚ガラスがはめ込まれたワイドな開口部、ゆったり広い吹き抜けのリビング、最新設備が導入されたキッチンやサユタリーなど、ゴージャスなモデルハウスそのままの家がそんなお手頃価格で手に入れられる、なんて夢を見るとすれば、そんな夢は見てはいけません。極端な言い方をすれば、趣味の良さそうな家具調度やドレープのカーテン、スプリングのよくきいた寝心地の良さそうなベッド、美しくてしかも使いやすそうなシステムキッチン、ジャグジーの風呂など、「まあ、なんていいんでしょう」と思えるものは、そのほとんどが坪単価に含まれない「オプション仕様」となっているからです。そのあたりの仕組みをわかっていないと、展示場であれこれ見ているうちに舞い上がってしまって、現実が見えなくなっちゃう。だから、モデルハウスはあくまで理想のモデルで、あなたが建てようとしている現実の家とは別のもの、ということを肝に銘じて見学すれば間違いはありません。「それならば、もっと現実に則したものを展示してくれればいいのに…」と思われるかもしれません。たしかに、そうあるべきかもしれません。しかし、モデルハウスというのは、基本的には「夢を売る場所」なんですね。夢であるからには、普通よりはぜいたくで豪華で、「こんなふうにしたい」と誰もが思うようなものでなければなりません。ファッションショウと同じですよ。スタイル抜群、彫りの深い顔だち、平均的な女性とはかけ離れた美しいモデルたちが着こなしてこそどんなファッションも映えるのであって、一般の女性が身にまとったとしてもモデルのようにはいきません。しかし、素敵なモデルの素敵なファッションを見て、素敵な自分を夢見ることが無意味とは言えません。夢見た結果、自分をみがこう、おしゃれをしようという前向きな姿勢が生まれるからです。夢って大切なんですよ。大きくてぜいたくに作られたモデルハウスは、誰もが描く住まいへの夢や願望を多少オーバーに表現したにすぎないと思ってください。だから、より現実に近い建物であれば、夢を見るどころではなくなり、見学者の数はぐんと減ると思いますよ。現実を目の当たりにするのは、やはりつらいものです。それでなくとも、この予算だとこれもだめ、あれもだめ、この程度の家しか建てられないなど、この先、厳しい現実といやでも直面しなければなりません。せめて、この時期だけでもいい物を見て大いに夢をふくらませて、楽しい気分で家づくりへと助走していただきたいものだと思います。

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