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房総の花を飾ってひと儲け

2018年9月4日「火曜日」更新の日記

2018-09-04の日記のIMAGE
<心を穏やかに豊かにする花々――弾む会話が売り上げ増につながる>私の不動産事務所兼用の店舗には、いつも花や青葉を飾っている。無味乾燥で固いコンクリートや分刻みの忙しい生活をしている都会人には、心を癒す季節のものが必要であり、花や植物の青葉をみるとホツとして落ち着く気持ちになるだろう、と思うからである。最近はお金儲けが趣味で、お金の方がずっとありかたいという輩も増えてきたが、それはそれで現実的であり結構であるが、いくら商売が大事だからといって、お金の奴隷にはなりたくないと私は思っている。こちらの好意が通じない人達には気の毒だが、見る、見ないはともかく、美しく可愛い花を飾って活々した青葉を並べることにより、私達の方の心が穏やかになり、豊かになればそれでいいと思う。2月から3月初旬の朝夕は、まだ肌寒い。アパート・マンションの賃貸業者にとっては、シーズン真っ盛りの時節なので、私の店では努めて花を配置することにしている。冬の花は少ないので、ホビーやストック、キンセンカが主力となるが、対寒力のあるこれらの花は、南房総で栽培されたものが多い。いわゆる、霜の降りない村からの使者である。舂に先駆けて一足早く咲くこれらの花は、南房の狭い耕地の中で、手作りで大事に育てられる。私は30年ほど前に館山市の南端にて、リゾートマンション建設と経営に3年ほどたずさわったので、ストックの花を見ると、昔の恋人に出逢えたような甘い感傷に誘われる。高貴な香りがして、花の姿も実に清々しい。テーブルにこれらの花を飾ると、たいていの女性はニッコリし、鼻を近づける。「きれいなお花ですね」と言われるので、「ええ、南房の花なんですよ。このストックの花は海の近くが好きでね、漁師も丘に上って作ってるんですよ。もっとも冬場は海が荒れて漁に出られないから、女房の作った花畑の手伝いをするんですけどね。この季節は妻が主体で、夫と働く女性の姿は活々してますよ」と素人の講釈をすると、「まあ、すばらしい花だこと」と会話もはずむ。それから商売に戻り、物件を説明することになる。広告宣伝費ではないが、冬の花を買って店に飾ることにより、ある程度の売上げ増につながっていくのではないだろうか。近頃はあちこちのビニールハウスで冬の花が作られ、同時に安くなったが、店には可愛い看板娘が、やっぱりいた方がいいのではなかろうか、と私は思っている。(「週刊住宅」2006年2月刀一日号掲載)75

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