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頭を下げて頼んでみましょう

2019年4月26日「金曜日」更新の日記

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貸しビルの一室で小さな旅行代理店をしています。契約期限にはまだ間があるのですが、思い切って表通りに出ようと思い、解約に出向いたところ、見知らぬ人に「このビルは私が買ったが、保証金については、私は関係ない」とつっぱねられてしまいました。その人は重ねて「途中で解約するときは、六ヵ月前に通知してくれないとこまる。いまから六ヵ月後なら解約しよう。そのときは敷金も返す」といいます。事務所移転を延期せざるをえないのでしょうか。保証金はもとの所有者に請求する敷金と保証金は、どちらもあとで返してもらえるとはいいながら、その性格はまったくちがったものであることは、すでにお話ししました。このちがいは、設問のようにビルの所有者が、BからCに代わった場合に、はっきりと現れます。まず、保証金ですが、Bと金銭消費貸借契約を結んで保証金という名目のお金を貸したとみなされるので、Cには返済の義務はまったくないのです。あくまでも、Bに返済を請求することになります。いまとなっては遅すぎますが、「建物を第三者に売るときは、保証金は返還する」という内容の特約を交わしておくべきでした。敷金は新しい所有者に謂求する一方、敷金は、Cが加納さんに返さなければなりません。Bからビルを買ったCは、Bがした契約内容をそっくり引き継ぎます。敷金は、賃貸借契約の一部なのですから、CがBに代わって返還するのは当然ということになります。なお、名前は保証金でも中身は敷金という場合があるので、注意してください。据え置き期間・利息・返還期日・方法などが契約書に明記されているものは、まちがいなく保証金ですが、家賃滞納などの損害は差し引いて返還するなどという定めがあるものは、実質的には敷金です。こういうものは、新しい所有者に返済を要求できるのです。借り主も一方的には解約できない借地法や借家法は貸し主が一方的に解約することを厳しく制限していますが、借り主のほうからの解約については言及していません。これはこの二つの法律が借り主をとくに保護していることを意味するだけで、契約の当事者である借り主の好きかってを許しているわけではないのです。Cが「六ヵ月後でないと」という条件を取り下げないかぎり、一方的に出て行くことは許されません。どうしても移転しなければならない理由があるのなら、頭を下げて頼んでみましょう。

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