へやみけ

トップ > 元年5月> 5日

農地を時効で取得した形にすれば許可は不要か

2019年5月5日「日曜日」更新の日記

2019-05-05の日記のIMAGE
私の持っている農地の一部を売りたいのですが知事の許可を受けなければならず長時間を要するため、買主が見つからず困っています。法律にくわしい私の友入の話では、その農地を買主が時効によって取得したことにすれば、知事の許可を受けなくてもよいと聞きましたが、こんなことをして大丈夫でしょうか。農地については、農地法三条により「権利移動の制限」かおり、所有権を移転したり、または地上権、賃借権などの権利を設定したりするときは、知事の許可を受けなければならず、この許可がないと、権利移動に対応した所有権移転などの登記はできないことになっています。また、民法では、時効という制度を認めております。これは継続した一定の事実状態、たとえば、ある人が所有者であるような事実状態を尊重して、この事実状態を権利にまで高める制度で、ある人が善意・無過失で一〇年間、悪意・有過失で二〇年間所有者であるような状態を継続したときは、その人は、そのものを時効で取得できることにしています(一六二条)。この時効により権利を取得するというのは、原始取得、つまりその人がそのものを最初から持っていたことになると考えられています。もっとも、この取得時効にもとづいた所有権移転登記も、時効による取得者と登記簿上の前所有者との両当事者の共同申請によらなければならないことは、ふつうの売買などによる所有権移転登記の申諸の場合とまったく同様です。とはいっても、時効による登記に応じる人はまず少ないでしょうから、ふつうは訴訟で時効による取得を主張しなければならないでしょうが……。そこで、時効による取得が、原始取得である以上は、農地法三条による権利移動にはなりませんので、知事の許可を得なくても、所有権の移転登記は可能ということになります。こんな理屈をうまく利用して、近年、実際には取得時効が完成していないので、農地法所定の許可を受けなければいけない場合なのに、当事者双方が話し合って、登記原因を時効取得ということにして、知事の許可を得ることなしに、農地の所有権移転登記を申請するといった例が見られるようになりました。もちろん、このようなことが許されるはずはありません。名は時効取得をかりて、実際には農地の売買をしているのですから、これは農地法の脱法行為であることは当然のことですし、また農地法違反にもなります。そこで昭和五二年八月に通達が出され、登記簿上の地目が田または畑である土地について、時効取得を原因とする権利移転または設定の申請があった場合は、登記官は。その旨を関係農業委員会に対し適宜の方法で通報し、また司法書士が申請代理人である場合には、その司法書士から事情をくわしく聴取して、農地法違反行為のないような取扱いをするようになっていますので、あなたの友人の話は、無理なようです。

このページの先頭へ