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商売替えするのに事前に家主の承諾を必要とするのか

2019年9月16日「月曜日」更新の日記

2019-09-16の日記のIMAGE
Q亡父の代から店を借りて理髪業をやってきましたが、近年ぱっとしないのて商売替えを考えていたところ、喫茶店営業の経駿をもつ友人が、任せてくれたら、パートナーとなって取り仕切ってくれるというのです
家主の承諾を得ないと契約違反になるてしようか
私はぜひやりたいのてす
▼業種を限定する特約はないか借家人としての義務を考えると、主として、つぎの三点が問題になりましょう
第一点は、営業態様の変更が建物の使用目的違反にならないかということです
営業変更を禁止または制限する特約がある場合とない場合で異なります
契約で、「○○業としてのみ使用する」とか、「営業の種目を変更する場合には、事前に貸主の承諾を要する」という特約がなされている場合は、無断で営業変更を強行することは契約解除の原因となると考えます
貸主に損害を与えるおそれはなく、やむを得ない営業変更で、貸主と借主との信頼関係を破壊しないという特別な事情が認められる場合にかぎり、契約解除が否定されます
単に店舗として賃貸借し、営業種目、変更に制限がない場合は、公序良俗に反するような営業をしないかぎり、商売替えをしても原則として契約解除の原因とはなりません
住居用建物を営業用に用いる場合とは、おのずから評価が異なります
店舗の賃貸借で有益費償還請求を放棄する特約はQ五年前にビルの一室を、甲いわゆる裸貸ししました
甲はパブ形式にして営業してきましたが、賃料を滞納がちて半年分にも達したので、契約を解除して明渡しを求めたところ、契約書ては、費用放棄となっているのに、その条項は借家法て無効てあり改装・内装エ事にかけた二○○○万円の費用と引換えでなければ出ない、といって居座っています
私は、甲にエ事費用を返す必要があるでしょうか
▼有益費か造作代かがポイント建物の賃貸借において、借主が賃借物件に費用をかけてその価値を高めたり、物件に別個独立の物を付け加えたりした場合、契約終了の時点でどのように清算するかが問題になります
とくに、賃借物件の改良、内装等に多額の資金を投下する営業用建物の賃貸借においては重要な問題点です
多くの契約では、貸主側の用意する契約書に、「借主が本件物件を明け渡すときはその事由、名目の如何にかかわらず、本件物件について支出した必要費、有益費の償還請求、または移転料、立退料等一切の請求をしない」という条項が入っています
あなたと甲との賃貸借もそうした事例と思われます
借主の投下した資本の回収については、民法に有益費償還請求権(六○八条二項)、借家法に造作買取請求権(五条)があります(本事例は五年前に契約されたものなので借家法が適用される
借地借家法の規定には後述)
そして、通説・判例によると、有益費償還の方は任意規定で、当事者間で自由な取決めが可能、したがって、あらかじめ放棄する特約も有効であるが、造作買取りの方は借家法の強行規定で、特約で事前に放棄すると約束しても無効であるとされていました
そこで、甲のかけた二○○○万円の費用が造作代なのか、有益費なのかがポイントになります
一般には、造作は、建物に付加されたが独立の存在を有し、したがって借主の所有に属するもの、有益費の対象は、建物に付合して一体となり、建物所有権に吸収されてしまうものとされていますが、改装・内装工事によって付加された物件、設備等が、どちらに該当するかの認定は容易ではありません
また、営業用建物、とくに飲食関係の店舗・貸室の賃貸借にあっては、借主の個性的な意図による改装・内装・造作が行われ、賃借物件の価値を高めるといっても、他の業種には利用価値がなく、新借主にとっても、貸主にとっても、物件価値の増加という意味合いは乏しいとみられます
したがって、有益費か造作代かによって、その放棄の特約を有効・無効と区別することは実益と実情に合いません
そこで新借地借家法は、造作買取請求権について検討した結果、造作買取請求権の規定は存続しましたが、これを任意規定としました(三七条)

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