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法人成りをした借家人から名義書替料を取れるか②

2019年12月31日「火曜日」更新の日記

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借家人のいうとおり、個人経営も会社経営も実質的に同一であるならば、家主であるあなたにとってとくに不利な事情があるとはいえず、家主と借家人の間の信頼関係が破壊されたとはいえないからです。そこで、先方は名義書替えをしてくれといってきているわけですから、あとは承諾料、あるいは賃料値上げを含めて交渉されるのがよいのではないでしょうか。実質上の借家権無断譲渡をさせないためにはなお、個人経営の法人成りの形式を装って、実質上、借家権の醸渡をされてしまうことがあることに注意しなければなりません。法人成りをしたからと家主に名義書替えをさせておいて、そのうち株式を第三者に譲渡したり、代表取締役を変更したりして、元の借家人は影も形もなくなってしまうことがあるのです。権利金が高い、内装、造作に金がかかっているという場合、借家人は投下資本を回収し、名義書替料を節約するため、譲受人は従前の権利金、賃料のままで引き継げるというので、会社の売買の形で借家権を売買することがありえます。会社相手の契約としてしまいますと、その後にたとえ代表取締役が代わって、まったくの第三者が営業権を取得したとしても、それを理由に契約を解除することはできなくなります。これでは、家主の権利はないがしろにされてしまいます。借家人が個人経営を会社にしたいといってきたときは、このようなところまで疑っておく必要があります。法人成りを認めた結果、実質的に借家権の無断譲渡を認めたようなことにさせないためには、会社名義にしてもその使用形態をこれまでと同一にして変更しないとか、代表取締役個人を会社の連帯保証人にするとか、名義書替え時の代表取締役や株主を無断で変更しないこと等の条件を付けておくとよいでしょう。

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